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「高校への数学」2023年3月号・5月号掲載分の「高数オリンピック」について

「高校への数学」編集長
堀西彰

 上記の2回の出題内容について、お叱りやお問い合わせをいただいております。
 私の不行き届きにより、読者の皆様に混乱や不安を生じさせ、また、不快なお気持ちにさせてしまいましたことを、深くお詫び申し上げます。

 この件について、事の経緯をご説明し、同様の事を起こさないような対策を申し述べます。

 まず、3月号の出題内容(Aとします)は、「高数オリンピック」としては、と申し上げるより、弊誌におけるどのコーナーでもとりあげることのないほどの初歩的なものでした。この問題に対し、40通余りの応募がありましたが、約半数のレポートに「簡単すぎるので訝ってしまいました」という内容の感想が添えらえていました。
 元々読者の方から寄せられたAに関しては、おそらく訂正後の問題(Bとします)内容を何らかの理由で誤入力された状態でお送りいただいたものと推察しております。これを拝見した担当者が、初めの段階でそれに気付き、お問い合わせをすべきところを、担当者自身も、その問題をBの内容に読み違えて解き、Aのまま入稿してしまいました。その後、ゲラが組み上がったのちもその思い込みのまま、一から問題文を読み込んで解くという作業をしておりませんでした。
 しかし、問題の核心は、1人の人間によるミスをカバーする手立てを取っていなかったことにありました。通常、「高数オリンピック」に関しては、3、4人の目が入るのですが、このときには、他の記事の進行の遅滞もあり、「高数オリンピック」に対する検討・校正が非常に手薄になり、しっかりとした校正作業は、事実上、担当者以外はしていませんでした。
 全体の進行具合を見て、この状況を「了」としたのは私であり、その判断の甘さがこのような事態を招いたと考えています。

 次に、5月号の出題については、問題を考える上で全く必要のない条件(Cとします)を問題文中にあたかも意味があるように載せてしまったことから、大きな混乱を与えました。いくつかのレポートには、「与えられた条件の使い方に苦しんだが、結局思いつかなかったので、無視して解いた」等の感想がありました。
 もともとこの問題は、「学力コンテスト」用に編集部内で用意した問題が元になっていました。そのときの問題内容は、Cを元手に別の問題を考えさせる誘導問題が初めにあり、その結果を用いてさらに高度な問題を考えさせるというものでした。しかし、「学力コンテスト」の出題検討の際に、5月号としてはやや難しい出題であるとの判断から、ノーヒントでの「高数オリンピック」での出題に変更しました。そのために、誘導となっていた前半の問題部分を削って原稿を作成しましたが、その際に、これも取るべきであったCを残したままにしました。
 こちらも、通常の検討・校正により取り除かれる類のものであります。しかし、このときは、私の緊急入院という事態が発生し、校了直前に、残っている原稿作成などにスタッフの手が取られ、「高数オリンピック」のみならず、全般的に校正作業が薄くなりました。

 2つの事柄に共通していることは、制作の進行状況や、突発的な事態に容易に左右されるような管理体制の甘さであります。さらにまた、月刊誌の制作の(定量的に申すのは正確ではありませんが)半分はルーチンの(決まり切ったことをこなす)作業であるのですが、それを同じスタッフが毎月繰り返す中で、緊張感の欠如を生じていたことも事実です。また、決まり切ったことを明確な指示として各スタッフに伝えていなかった状況もありました。

 今後、「高数オリンピック」についてこのような事態を起こさないよう、高数の編集スタッフ全員参加による「学力コンテスト」の出題に関する検討会において、「高数オリンピック」の出題に関しても検討をすることとします。これまでは、持ち回りで各自が検討する形をとっていましたが、その場合、各自の個別の状況によってチェックのレベルが変わってしまう可能性がありますので、スタッフ各自が白紙の状態から問題をチェックして、その結果を検討会に一堂に持ち寄る形にします。
 また、制作全体についても、不測の事態を想定して、これまでよりは早目の進行を目指し、制作計画の見直しをしてまいります。さらに,「誰が」「何を」「いつまでに」行うかを明示してスタッフ全員でこれを共有します。

 この度は、長年にわたり読者の皆様から頂いてきました信頼を、覆すような事態を招き、誠に申し訳ありません。高数スタッフ一同、今回の反省を胸に刻み、これからの制作に務めてまいります。今後も何卒よろしくお願い致します。

2023年5月29日